宅地建物取引業とは
宅地建物取引業(以下、「宅建業」という。)とは、宅地・建物について
(1)自分で売買・交換する
(2)他人が売買・交換・賃借するにあたり、代理・媒介する
ことを『業として行う』ものを言います。
業として行うとは、『不特定多数の人』を相手に『継続、反復してこれらの行為を行うこと』を言います。
不動産業と宅地建物取引業(宅建業)の違い
不動産業は、全部宅地建物取引業にあたるのでしょうか?
実は、不動産業と宅建業は全く同じというわけではありません。
不動産とは、そもそも土地とその定着物、あるいはそれらに対する物権のことをいうのに対し、宅地建物は、不動産のうちの宅地・建物のみを対象とします。
さらに、不動産業には、売買、賃貸、仲介(媒介)、管理(例:分譲マンションの管理、賃貸物件の管理等)などの業種がありますが、宅建業は、不動産業のうちの一部、売買や仲介といった取引(流通)を取り扱う業種のみが含まれますので、「管理業」は宅建業に含まれないことになります。
以上のことから、
大家から依頼を受けて行う貸借の仲介(入居者募集など)は宅建業に含まれますが、
自らが直接行う貸借(貸しビルやアパート経営をする行為など)は宅建業に含まれず、宅地建物取引業の規制の対象業務にはなりません。
区分 | 自己物件 | 他人の物件の代理 | 他人の物件の媒介 |
---|---|---|---|
売買 | ○ | ○ | ○ |
交換 | ○ | ○ | ○ |
貸借 | ✕ | ○ | ○ |
会社員でマンション賃貸をしている場合、宅建業免許はいるのか
先に記したように、自らが直接行う貸借(貸しビルやアパート経営をする行為など)は宅建業には含まれません。
親族に所有権がある宅地・建物を自分が業として仲介する場合は、注意が必要です。
宅建業者に勤務する人が独立開業する場合の流れ
宅建業者に勤務する人が独立開業する場合の流れは、以下のとおりです。
自分が宅地建物取引士の資格を持っている
- A会社現在勤務する会社を退職する
- A会社に退職証明書をもらう(法人代表者印押印済みのもの)例 7/31
- B会社新しく自分が会社を設立する 例 8/1
- 取引士として登録している都道府県に個人の勤務先の変更届を提出
- B会社で宅地建物取引業免許申請を行う
- 希望する保証協会で申請・供託金の支払い等の手続きを行う
⇒ 保証協会とは - 開業
自分が宅地建物取引士の資格を持っていない
- A会社を退職する
- B会社を設立する例 8/1
- B会社で専任の取引士を雇う
- B会社で宅地建物取引業免許申請を行う
- 希望する保証協会で申請・供託金の支払い等の手続きを行う
⇒ 保証協会とは - 開業
宅地建物取引業を営むためには免許が必要
宅建業は、「宅地建物取引業法」という法律の規制によって、国土交通大臣または都道府県知事の免許を受けた者でなければ営むことができません。
会社定款の事業目的に下記のいずれかがある場合は、宅建業免許(宅地建物取引業免許)申請が必要になります。
・宅地建物取引業
・不動産の売買、賃貸、仲介
宅建業免許の区分
宅建業の免許は、個人又は法人が受けることができます。
個人事業主から法人成りをする場合、個人事業主の廃業をしたのち、法人で新たに新規の宅建業免許申請をする必要があります。
免許が下りるまで一定期間(1か月~3か月。都道府県によって異なります)営業ができません。
国土交通大臣免許か、都道府県知事免許かは、事務所(店舗等)の設置状況が都道府県をまたぐかどうかによって決まります。宅建業の免許の有効期間は以下のとおりです。
事務所が複数ある場合は、手続きに留意する点が複数あるので、注意が必要です。
免許権者 | 2つ以上の都道府県に 事務所を設置 |
1つの都道府県に 事務所を設置 |
||
---|---|---|---|---|
法人 | 個人 | 法人 | 個人 | |
国土交通大臣 | ○ | ○ | - | - |
都道府県知事 | - | - | ○ | ○ |
宅建業免許の有効期間
新規 | 更新 | |
---|---|---|
大臣 | 5年 | 5年 |
知事 | 5年 | 5年 |
起算日:免許年月日(実際に営業できるのは、供託後諸手続きが終わってから)
宅建業免許は永久に有効というわけではなく、厳密な審査があり、一定の資格を有すると認められる者のみに与えられます。この一定の基準に合致している状況は、時間の経過により変動する性質のものですので、基準に適合しなくなったことが判明した場合には、免許取消し等の処分の措置が取られます。
従って、ある一定期間ごとに、定期的に免許資格要件に合致するか否かを判断することが必要になります。
宅建業の免許更新の手続きは、その有効期間が満了する日の90日前から30日前までの間にしなければなりません。
なお、この手続を怠った場合は、免許が失効となり、更新の手続をしないで宅建業を営みますと、無免許営業により罰則(3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金)が科されます。
宅建業者が宅建業法違反したときの刑事責任
宅建業法違反については、監督処分などの行政責任が問われる場合が多くありますが、行政責任とは別に、刑事責任(刑事罰)が問われることがありますので、注意が必要です。下線部は、免許関係の刑事罰です。
内容 | 罰則 |
---|---|
・無免許営業(宅建業者以外の者) ・名義貸しで他人に営業させた ・不正手段による免許取得 ・業務停止処分に違反して営業 |
3年以下の懲役 又は 300万円以下の罰金 又は 併科 |
・相手の判断に重大な影響を及ぼす事項を故意に告げなかった場合(事実告知義務違反) | 2年以下の懲役 又は 300万円以下の罰金 又は 併科 |
・不当に高額報酬を要求する行為 | 1年以下の懲役 又は 100万円以下の罰金 又は 併科 |
・供託をせずに営業開始した場合 ・誇大広告の禁止に違反した場合 ・不当な履行遅延をした場合 ・手付貸与による契約締結の誘引をした場合 |
半年以下の懲役 又は 100万円以下の罰金 又は 併科 |
・免許申請書の虚偽記載 ・名義貸しで他人に営業表示や広告をさせた ・専任の取引士の設置義務違反 ・報酬基準額を超える報酬を受領した |
100万円以下の罰金 |
・37条書面の交付義務違反 ・従業者名簿を備えていなかった場合 ・帳簿を備えていなかった場合 ・守秘義務違反 |
50万円以下の罰金 |
・登録消除等による取引士証の返納義務に違反 ・事務禁止処分による取引士証の提出義務に違反 ・重要事項の説明の際に取引士証の提示義務に違反 |
10万円以下の過料 |